TOP > 事務所ニュースレター > 弁護士 寺田 有美子
「主文。被告人を懲役○年に処する。」そう言い渡した後、5秒間以上くらいは、間があった。それから、「この判決の確定から○年間、その執行を猶予する。」裁判官は、ようやくそのように続けた。この5秒間、被告人の心臓は飛び出しそうだったに違いない。執行猶予付判決が言い渡され、被告人の緊張感が緩むことはあり得ることである。気の緩みが、再び罪を犯してはならないという思いを弱めてしまうことも、あるかも知れない。島の裁判官にとって、再犯を犯してしまった被告人との法廷での「再会」は、悩みの種だったのではなかろうか。たとえ執行猶予がついても、有罪判決。裁判は儀式ではない。言い渡しの日の緊張感、恐怖感を忘れずに、今度こそ立ち直って欲しい。そんな人間らしい温かい祈りが、裁判官の小さな「工夫」から伝わってきた。私も、被告人の再出発の成功を心から祈っている。